「漢方薬 で がん が治った!」は、正しいけど 正しくない?
癌に対する治療目的
西洋医療の限界を感じ、東洋医学に頼られる方は後を絶ちませんし、しかも、中には漢方の治療成績の方が良いことがあります。
では、なぜ 現代医療で効果が無かったのに漢方治療で効果が出たのか?
それは、西洋医学と東洋医学では、治療方法というか治療目的が全く異なるからです。
癌に対する西洋医学的治療方針
例えば、肺癌で考えてみます。
(転移の無い)肺全体の10%の癌が見つかった場合、西洋医学(普通の病院)では、一般的に正常部分を含む10%以上の肺を切除する治療を検討します。(場合によっては20~30%以上切除しなければならないケースもあります。)
「今 切除できるものは切除しましょう」という発想は、西洋医師である私も賛成です。
しかし、転移があった場合や、肺全体にまんべんなく癌が存在している場合などは、どんなに切除しても再発する危険が高く、そのたびに正常な細胞を一緒に取り除くと「肺」が「肺」として機能できなくなり、かえって死期を早めることになるから手術が選択できません。
そういう場合、抗癌剤投与などがメインになるのですが、抗癌剤も、副作用として正常細胞を攻撃してしまい、場合によっては死期を早めてしまう恐れもあります。
ちなみに、抗癌剤に関しては、医師が10人いたら10通りの考え方があり、残念ながら、現代医療では、そのなかに圧倒的に正義の選択肢は ありません。
癌とは何だ?
少し脇道にそれますが、よく「○○さんの死因は××癌でした」と耳にしますが、「癌で死ぬ」という表現は厳密に言うと正しくありません。
前述のような 末期の肺癌患者さんの場合、その悲劇的な結末は、正常な肺細胞が癌細胞に変わるため肺が機能しない『呼吸不全』や免疫力低下による『重症感染症』です。
他の部位の癌も、例えば肝臓癌が拡大すれば『肝不全』、癌が全身の内臓に転移・拡大すれば『多臓器不全』という状況になってしまいます。
つまり、「癌になったから死亡する」のではなく、その後に起こる「癌によって正常な細胞が急速に減少するから死亡する」という事態が予測できることが、癌の恐ろしさの正体なのです。
癌に対する東洋医学的治療方針
東洋治療の場合は、根本から異なります。
「悪いものを排除する」のではなく「良いもの(正常な細胞)を減らさない」という考え方です。
たとえ肺全体の10%の癌+転移があった場合や、肺全体に癌が拡大している場合でも本人が苦痛を感じていない(普通に生活できている)場合もあります。
それは、残された 正常な細胞が、元気に機能しているからです。
癌により正常な肺の機能が半分失われたとしても、残りの正常な肺が その2倍働けば、理屈上は肺機能は保たれるハズです。
良い例えかどうか分かりませんが、空気の薄い高山で生活している方々は、我々よりも心肺能力が高いです。
2倍とはいかなくても、残りの正常な肺を今まで以上に働かすようにすることは、可能だと思います。
このように、東洋医学的考えは「正常臓器の何%が癌に侵されていても、残りの正常細胞が正常に機能し、しかもこれ以上 癌に侵されなければ死なない」という発想です。
具体的には、
① 残された正常細胞の血流を改善させる(酸素や栄養を与える)
② 良く眠り、良く食べることで疲労を除き 免疫力を強化させるための体力を蓄える
という目的で、そういう効果が期待できる漢方薬を服用します。
よく、「漢方薬で癌が治った」と言っていただくことがありますが、これも正しく言い換えると、「漢方薬という武器を利用して自分の力で癌をやっつけた」ということになります。
東洋医学と西洋医学の併用も
もちろん、西洋医学と東洋医学は併用可能です。
抗癌剤を投与しながら漢方薬で抗癌剤の副作用を抑え、免疫力を強化させるということも期待できます。
(どちらも『良いとこ取り』すればいいのです。)
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