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小葛湯(しょうかつとう)とは? ~パンダを救った漢方薬!?

この記事の所要時間: 447

パンダの風邪を治した漢方薬

 

以前の投稿で、1972年に国賓待遇で来日したパンダ「カンカン」が風邪をひいた時に漢方薬を服用させて治したというエピソードを紹介しました。(これにはちょっとした笑い話があります。くわしくはこちら

手前味噌で恐縮ですが、この時、漢方薬を処方したのが私の祖父で、その際処方した漢方薬が【小葛湯(しょうかつとう)】という私の診療所オリジナルの漢方薬でした。

 

 

この方剤は、今でも私の診療所で最も多く処方している漢方薬です。

 

 

 

『葛根湯医者』ってなに?

 

【小葛湯】を分かり易く説明すると『葛根湯』系の漢方薬です。

葛根湯は、最も有名な漢方薬ですが、みなさんは、落語の小噺(こばなし)で『葛根湯医者』という題材があるのをご存知ですか?

小噺の内容を要約しますと、
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江戸時代には医師免許などというものはなく誰でも医者になれたので、名医とヤブ医者との差が明確でした。その中で、とても評判のいい名医がいました。が、その名医が処方するのはいつも葛根湯。
「頭が痛い」と訴える人にも「葛根湯を飲みなさい。」
「お腹がシクシク痛む」と訴える人にも「葛根湯を飲みなさい。」
「足が痛い」「背中が痛い」「目が悪くなった」という人にもみんな「葛根湯を飲みなさい。」と言い、しまいには、ただ付き添いで来た人に対しても「ご苦労なことで。退屈だろうから葛根湯を飲みなさい。」
********************
というオチです。

 

どんな患者にも葛根湯を処方した医師が名医となったという題材で、一見、漢方治療はいいかげんだなどと皮肉っているようにも聞こえますが、この考えは、あながち間違ってはいないのです。

 

 

 

葛根湯は風邪薬ではない!?

 

テレビCMなどで「風邪には葛根湯」というキャッチフレーズを耳にしますが、実は、漢方医は葛根湯を風邪薬と認識していません。「風邪に良く効く」のですが、「風邪の時しか効かない」「風邪の時だけに飲む」という薬ではないのです。

漢方薬の教科書には、風邪・結腸炎・中耳炎・膀胱炎などといった熱性疾患のほかに、肩こり・リウマチ・蕁麻疹・夜尿症などなど、様々な疾患に効果があると解説しています。

 

葛根湯は文字通り【葛根(かっこん)】と、【麻黄(まおう)】という生薬が主成分と言っていいような漢方薬です。(それ以外の生薬は、補助的役割りであったり、副作用止め的役割りで使われています。)

【葛根】は首や肩こりをほぐす作用が強いと考えられています。また、【麻黄】は西洋医学で用いられている【エフェドリン】という非常に大事な薬剤の原料で、身体を温め発汗させる作用があります。

 

 

つまり、「筋肉のコリをほぐし血流を改善させ、発汗させることで体内にある邪(=悪いもの)を身体の外に出す作用がある」と考えられています。

 

一般的に病気になるのは、
①血流が悪化し筋肉や内臓に供給している酸素や栄養素が減少することで本来の動きができなくなる。
②皮膚なら皮膚、胃粘膜なら胃粘膜といったように、同じ場所には同じ細胞が細胞分裂で新しく作られるのに、血流減少で細胞分裂が正常にできなくなるとタコやイボ、ポリープといった元々の場所とは異なる細胞になり、それが腫瘍や癌の原因になる。
などという風に考えます。

そういった『血流減少』を改善する作用が期待できる漢方薬で、真っ先に使いたいのが【葛根湯】です。

 

 

 

葛根湯の立ち位置?

 

小噺『葛根湯医者』では、

「頭が痛い」→筋肉のコリが酷くて頭痛になった。
「お腹がシクシク痛む」→腸の血流が悪くなった。
「足が痛い」「背中が痛い」「目が悪くなった」→それぞれの筋肉への血流が悪くなった&筋肉の衰えに対し酸素供給を増加させる。
「付き添い」→何もしないでじっとしているのも疲れる

といった目的で葛根湯を真っ先に使用していると考えることができます。

 

少なくとも私は、「【葛根湯】は『広く浅く』効かせるにはとても良い漢方薬」という認識を持って処方しています。「ちょっと疲れた」「ちょっと風邪をひいた」というような、急に出現し、明確な原因がある時には一番優れた漢方薬だと言えます。

 

 

 

小葛湯の使い方

 

私の祖父が研究に研究を重ね、葛根湯を主体とし、(胃腸の働きを整える作用など)葛根湯がやや劣っている部分を補う成分を加えた漢方薬が【小葛湯】です。

【小葛湯】の使い方としましては、葛根湯同様、「広く浅く」がキーワードです。

 

①ちょっと疲れている時
②集中力をアップさせたい時
③夏バテなど胃腸虚弱を感じた時
④風邪のひきはじめ
⑤肩こり・腰痛
⑥身体が冷えた時
⑦二日酔い時
・・・・などなど、急に感じた「嫌な状態」を改善させる効果が期待できます。

そして、【小葛湯】や【葛根湯】で改善できないような「根深い症状がある時」は、「狭く深く」効く漢方を処方してもらった方が良いかもしれません。

 

 

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