漢方薬を嫌う医者が知らない大事なこと
なぜ一部の医者は漢方薬を毛嫌うのか?
日頃、診療していると、「私は とても飲みたいのですが、主治医が『漢方薬なんて飲むな』って言うんですよね・・・。」といった相談を受けることがあります。
そういう医者が漢方薬を患者さんに飲ませたがらない理由は、だいたい以下の通りです。
①「診断自体が極めて曖昧で 成分や効能が不確定」などと「漢方薬なんて民間療法に毛の生えたもの」程度にしか思っていない。
②漢方薬と西洋薬を併用して何らかの変化があった時に、どちらの薬効なのかが分からなくなるから。
③漢方薬の一部の生薬に含まれる有効成分による副作用の報告を(中途半端に)知っているから。
これらの理由に共通することは、「漢方薬を否定する医者は、実は漢方薬のことを全く知らない」のです。
「医者が否定するから良くないのかな?」と思うのは、ハッキリ言って間違いです。(知らないから勧めないのです。)
以前の記事で「西洋医学は統計学だ」と書いたことがありますが、少々乱暴に言うと「過去のデータに照らし合わせ、症状が大きく一致するものがあれば『病気』と診断し、その病気に対するマニュアルに沿って治療するのが『西洋医学』」です。
そして、そのマニュアルには、科学的根拠のある治療法が優先され、漢方薬のような「一見、何を根拠に症状を改善させるのかが分かりにくい治療法」は除外されがちです。
医者が漢方薬を否定できない理由
みなさんは『脚気(かっけ)』という病名を聞いたことがありますか?
この病気は『ビタミンB1』の欠乏が原因で、今では よほどのことがない限り発症しない病気ですが、江戸時代には、この病気の正体が分からず、死ぬ病気として恐れられていました。
江戸時代、米を精米して白米を食べる習慣が広まった江戸で、玄米に含まれるビタミンB1を摂ることが出来なくなった人々の周りで脚気が大流行し、『江戸患い(えどわずらい)』と呼ばれていました。そんな中、米ではなく蕎麦(ビタミンB1を多く含む食材)を食べている人々には脚気が発症しにくいということが発見され、当時の漢方医学では、蕎麦が治療『薬』として用いられていたようです。(ちなみに、関西のうどんに対し、関東で蕎麦が主流になったのは、このせいと言われています。)
同じような話が、15~17世紀の、いわゆる大航海時代にもあります。
ビタミンCの欠乏による『壊血病(かいけつびょう)』です。
当時の航海では新鮮な柑橘類を入手することが困難だったので、一回の航海で、必ず数人が壊血病を発症し、亡くなられたようです。
ちなみに、ビタミンCと壊血病の関係が明らかになったのは、それから数百年後の1932年(20世紀)のことです。
今の世の中では、蕎麦や柑橘類を『薬』と思っている人は居ないでしょう。しかし、少なくとも大昔は、正真正銘『治療薬』だったのです。
この理論は、現代にも当てはまります。
今の世の中では、どんな成分が どういうメカニズムで効いているかが分からないとしても、それを用いた多くの患者さんの症状が改善したのであれば、それは『薬』なのではないでしょうか?
昨日今日発見されたものではなく、数千年続いている漢方薬は、やはり、それなりの薬効があるハズです。(今の世の中では まだ その主成分が発見できていないだけです。)
「(過去のデータが無いから)責任を取りたくないので漢方薬を飲ませない」という医者は、大昔なら「脚気の患者に蕎麦を食べさせなかった医者」や「壊血病の患者に柑橘類を食べさせなかった医者」と同じかもしれません。(※あくまでも私の個人的見解です。)
まだ②や③についての反論(?)が できていませんが、今回、少々話が長くなりましたので、次週、改めて投稿したいと思います。(次回へ続く)
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