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漢方薬を嫌う医者が知らない大事なこと②

この記事の所要時間: 441

目の前の患者を救うのも、研究結果で多くの患者を救うのも、同じ医者の仕事

 

前回、東洋医学を完全否定する医者が漢方薬を患者さんに飲ませたがらない理由として

 

①「診断自体が極めて曖昧で 成分や効能が不確定」などと「漢方薬なんて民間療法に毛の生えたもの」程度にしか思っていない。 

②漢方薬と西洋薬を併用して何らかの変化があった時に、どちらの薬効なのかが分からなくなるから。

③漢方薬の一部の生薬に含まれる有効成分による副作用の報告を(中途半端に)知っているから。

 

と、挙げてみました。

このうち、①については前回反論した(・・・つもり)ですので、今回は②からです。

 

 

私の診療所で実際にあった話なのですが、末期のがん患者さんで手術ができず、抗癌剤治療をすることになり、その際、主治医から「何が効いているか分からなくなるので、この薬以外は使わないでください。」と言われたそうです。

 

以前、抗癌剤治療については、「医師が10人いたら10通りの考え方があり、残念ながら、現代医療では、そのなかに圧倒的に正義の選択肢は ありません」という投稿をしました。

(あくまでも個人的な考えですが)私は、口が裂けても「何が効いているか分からなくなるので、この薬以外は使わないでください。」とは言いません。患者さんの命を研究材料にしている気がしてならないからです。どんな方法を用いてでも、目の前の患者さんを救うことに全力を注ぎ、その過程や結果を研究材料に用いれば良いのではないでしょうか?

 

几帳面なのか、融通が利かないのか、少なくとも、そんな理由で漢方薬を否定しているのであれば残念でなりません。患者さんの生きる望みを奪いかねない発言だと危惧しています。

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漢方薬の副作用・・・?

 

さて、最後に、③「漢方薬の副作用」問題ですが、漢方を否定する医療関係者に よく 槍玉に挙げられるのが、「甘草(かんぞう)」という生薬に含まれている「グリチルリチン」という成分です。

 

内分泌疾患のなかに「アルドステロン症」という病気があります。

詳しい話は省略しますが、この病気は、副腎の異常(腫瘍や過形成など)で、副腎ホルモンが過剰に分泌され「高血圧」「低カリウム血症による筋力低下、四肢麻痺」などの症状を引き起こします。

そして、これに似た症状を引き起こす病気に「偽(性)アルドステロン症」という病気があり、この原因が、「グリチルリチン」の過剰摂取が関係していることが分かっています。

 

では、甘草って、それほど恐ろしい物質なのでしょうか?

 

甘草は、ショ糖の50倍の甘さを持ち、古来より、調味料、菓子や醤油の材料として用いられるなど、用途としては大半が食用です。(詳しくは、こちら

漢方薬の実に7割近くに用いられていますが、実は、西洋薬でも多く使われています。

湿疹・皮膚炎・蕁麻疹~肝炎・肝硬変・肝臓癌まで、 肝機能異常に対する治療薬に『強力ネオミノファーゲンシー』という注射薬があります。この薬は、肝機能障害時には必ずと言っていいほど用いられていますが、実は、この薬の主成分は甘草です。(詳しくは、こちら

 

また、巷では、甘草の煎じ薬を「リコリスティー」と呼び、超有名女性シンガーが愛用しているなど、スゴい効能があると話題になっているそうです。(ネットで「リコリスティー」と検索してみてください。)

 

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甘草1g中にグリチルリチンは約40mg含まれていると言われており、昭和53年2月13日の厚生労働省の指針では、1日の上限値はグリチルリチンとして200mg(甘草として5g)とされています。

 

一般的に用いられる漢方薬に含まれる甘草の1日分の含有量は、だいたい3g前後です。

少し、専門的な話をしますが、こむらがえり や しゃっくり、痙攣の治療薬で『芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)』という方剤が有名ですが、この方剤に用いられている甘草は5~6gと、やや多めです。しかし、この漢方薬は、長期的に服用する薬ではないことは、漢方に関わっている医療関係者なら常識です。

 

今まで、1日の摂取量について書きましたが、厚生労働省の報告では、偽アルドステロン症の発症と摂取量には、明確な関係が無いという結果もあります。(詳しくは、こちら

この報告書によると、偽アルドステロン症の発生件数は、平成16年度で わずか24人、平成17年度では17人です。

日本国内で漢方薬を服用している人が どれくらい おられるのか分かりませんが、全国で年間20人前後の発症率を怖がって漢方薬を否定する行為は、漢方診療専門の医師としては「交通事故が怖くて家の中から一歩も出ない生活をする」くらいの違和感を感じてしまいます。(※あくまでも、個人的見解です。)

 

 

医者が、自分の専門外の診療科目について責任が持てないことは十分理解できます。

でも、だからといって、専門外の領域を完全否定して排他しようとするのは間違いです。

「漢方薬を服用する権利」は誰にもあります。

 

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