漢方医は決して「筋肉をつけてください」とは言わない
医者の「筋肉をつけてください」は、職場放棄発言?
東洋医学では、全身の筋肉量を重要視します。
筋肉量が少ないと全身の血流が悪化して、筋肉や内臓が動きにくくなったり、細菌やウィルスなどの病原体が体内に侵入してきても、抗体の産生や感染部位への出動に悪影響を与えたりするからです。
だから、全身の筋肉量が少ない(=虚弱状態)の人ほど体調を崩しがちなのですが、そういう人々に対して、医者が「筋肉をつけてください」と言うのは、病気の人に「病気にならないでください」と言っているようなもので、漢方医にしてみたら職場放棄発言に聞こえてしまいます。
それに、安易に「筋肉をつけてください」と言っても、筋肉には『つけ方』があるのです。
筋肉の『つけ方』
みなさんは、「筋肉をつけてください」と言われたら「鍛えなきゃ」と思いませんか?
でも、ちょっと待ってください。
例えば、長時間「前へならえ」の体勢を続けると、腕の筋肉がプルプルしてきます。一見、何もしていないように見えますが、腕の筋肉は、その姿勢を保つため働いているからです。
つまり、我々は、朝 起きてから 夜 寝るまで、様々な筋肉を使って その姿勢を保持しています。
ということは、少々強引な言い方をすると、我々は、買い物に行ってる時も、電球を代えている時も、パソコンを操作している時も、みな、どこかしらの筋肉を動かして鍛えているのです。
そして、筋肉量の少ない人は、そういう日常の作業をしているだけでも十分疲労しています。
そんな状況で、スポーツジムなどで、身体を鍛えようとするのは、実は、逆効果になるかもしれないのです。
筋肉量が少ない人にとって、その少ない筋肉が疲れている時に、もっと疲れること(ジムで鍛えるなど)をすれば、もっともっと疲れる(悪い症状が出現する)のは 当たり前です。
そういう人には、それよりも、まず第一にしてもらいたいことがあります。
それは「食べること」です。
筋肉製造機
「食べること」の重要性を理解していただくために、我々の身体の中に【筋肉製造機】というものがあると仮定して説明します。(もちろん、そんなものはありません。)
この機械は、〈我々が食べて消化・吸収した栄養物〉という『材料』を入れ、開始スイッチを押すと〈筋肉〉という『製品』が出来上がるといった仕組みとします。
この時、「身体を鍛える」行為は、スイッチを「弱」から「強」にして 機械のパワーを上げる行為に相当します。
でも、『材料』がないのに 機械のパワーを上げただけでは『製品』は出来ずに、むしろ、機械そのものに負担をかけ、その結果、オーバーヒートで故障してしまうかもしれません。
だからこそ、『材料』すなわち「食べること」が重要なのです。
「筋肉をつけやすい状況にします」が正解
でも、そうは言っても、お腹が空いていない(胃や腸が十分動いていない)のに無理やり ご飯を食べたって 胃や腸が もたれるだけです。
さあ、ここで漢方薬の出番です。
胃や腸の血流を改善させる効果が期待できる漢方薬で消化器系の働きが改善すれ、食欲が出ます。そして、この状況で食事をすれば、先ほどのイラストの『材料』が増える形になります。
そして、『材料』が増えた状態になってから、晴れて 鍛えることで筋肉が出来上がります。
※ ここで、漢方薬は、直接筋肉を作るように作用しているのではなく、筋肉がつくられやすい環境に体質改善させているということがポイントです。
以上の理由により、医療人としては「筋肉をつけてください」ではなく「筋肉をつきやすい状況にするために治療しましょう」と言うことが正解なので、漢方医は決して他人事のような発言はしないのです。
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