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漢方生薬を全種類使ったらスゴイ薬が出来るのか?

この記事の所要時間: 327

漢方薬の構成生薬

 

みなさんは、漢方薬と聞くと『葛根湯(カッコントウ)』とか『当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)』などといった具合に、一般名(方剤)をイメージされると思います。

 

方剤には、その漢方薬を構成している生薬(しょうやく)と呼ばれる成分があります。

 

具体的には、『葛根湯』の構成生薬は
【葛根(カッコン)・麻黄(マオウ)・桂皮(ケイヒ)・芍薬(シャクヤク)・甘草(カンゾウ)・大棗(タイソウ)・生姜(ショウキョウ)】
の7種類であり、これらを煎じたものが、晴れて『葛根湯』と呼ばれます。

 

 

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生薬を全部混ぜると・・・

 

漢方生薬は、良い効果があるから使用されている訳で、

「だったら、それらをすべて集めて煎じれば最強の薬が出来上がるのでは?」と思いませんか?

 

しかし、結論から言うと、この考えは上手くいかないのです。

 

 

みなさんは、『芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)』という名前を聞いたことがありますか?

この方剤は、筋肉のけいれんを抑える(筋肉の緊張を緩める)作用が強く、足がつっているとか、しゃっくりが止まらなくて困っている時などに服用すると、即効性が期待できる方剤です。

余談ですが、以前、診察中に急に しゃっくりが出現して止まらなくなってしまったので、芍薬甘草湯を服用してみたところ、漢方に携わっている私でも驚くほど、ピタッと しゃっくりが止まりました。(もし私が患者側で、その光景を見ていたら「これはヤラセなんじゃないか?」って疑いたくなるくらい急激にです。笑)

 

 

そんな『芍薬甘草湯』は、どんなにスゴイ生薬が入っているのかというと、実は、【芍薬】【甘草】のみです。

【芍薬】は、鎮痛、鎮痙作用が高い生薬であり、そこに鎮痛作用のある【甘草】を加えた(だけ)で、これほど強い効果を発揮しているのです。

 

 

・・・と、ここで一番上の『葛根湯』の構成生薬を もう一度見てください。

 

『葛根湯』には、【芍薬】【甘草】も含まれていませんか?

しかし、確かに『葛根湯』は首や肩のコリをほぐして血行を改善させる効果がありますが、『芍薬甘草湯』のような即効性のある強い鎮痙作用はありません。

 

それはなぜかというと、「漢方あるある」のように言われているのは、

構成生薬の数が少ない方剤ほど『キレ』が強い反面、身体に負担も出やすく、
構成生薬の数が多い方剤ほど『マイルド』に身体の負担も低く確実に作用していく

・・・ということです。

 

 

『芍薬甘草湯』は、即効性が高い反面、長期服用すると胃の不快感や浮腫が生じることもあり、症状がひどい時にだけ服用するような漢方薬です。

一方、

『葛根湯』は、芍薬甘草湯ほど副作用が出現する可能性は高くなく、長期服用することも可能です。

 

 

構成生薬が2種類→7種類になっただけで、作用が ややマイルドになるのだから、これが何十種類も含んだ方剤は、もはや、薬効がほとんど無いような状態になるかもしれません。

 

 

これと同じ理由で、病院によっては、漢方薬(方剤)を2~3種類同時に処方して服用させようとする所もありますが、これも、同時に2~3種類を服用してしまうと、本来期待している作用が ぼやけてしまうこともあります。

私の診療所では、例えば『喘息に効く方剤』と『胃腸障害に効く方剤』を、どうしても一回に服用してもらいたい時には、先に服用した方剤から数分空けてから次の方剤を服用していただいています。

 

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