漢方医は決して「鎮痛剤がダメなら諦めて」とは言わない
「痛み」とは?
人が痛みを感じるメカニズムは、医学的に解説すると とても複雑で難しいし、その割に得るものが無いので省略します。(笑)
要は、「痛み刺激が、神経を通って脳に伝わることで、痛みを感じる」のです。
痛み(疼痛)には、急性疼痛と慢性疼痛があります。
急性疼痛とは、(イラストのように)物理的な身体の損傷や炎症反応などにより急に発生した痛みです。この痛みは、痛みの原因が治ったら消失します。
一方、
慢性疼痛とは、「身体の物理的な損傷が治っても痛みが消えない」とか「(膝関節の変形や血行障害などで)痛みの原因が半永久的に続いている状態」といったような、むしろ、痛み そのもの が病気みたいになっていて、長い間 生活に支障をきたしているような痛みです。
急性疼痛が慢性疼痛に移行するケースもあります。
なんで痛くなるの?
そもそも、どうして痛みを感じるようなメカニズムがあるのでしょうか?
それを理解するためには、痛みの原因に目を向けなければなりません。
先ほどのイラストで考えてみましょう。
足を軽く踏まれたぐらいでは、それほど痛くないですが、強く踏まれたら我慢できなくなりますよね?
この時の身体の変化は、『足を踏まれる』=『血流障害が発生している(虚血状態)』のです。
軽く踏まれたぐらいなら、その部分は他からの血流で代用できますが、強く踏まれたら、その部分一帯が広範囲に強い虚血状態となり、(オーバーに言うと)筋肉が壊死してしまうかもしれない事態に発展しかねません。
もし この時に痛みを感じなかったら、他人の足を払いのけるといった防御反応をしないので、そのまま どんどん虚血状態が進み、本当に壊死してしまうかもしれません。
つまり、
我々にとって『痛み』とは、身体の異常を早く知らせるためのシグナルなのです。
ちなみに、「痛い」よりも、もっと軽い反応が「しびれる」とか「かゆい」という感覚です。
「正座して足がしびれている状態」は『ごく軽度の血行不良状態』であり、この状態が進み、例えば何時間も正座していると症状が悪化し激痛に変わります。(江戸時代の拷問?)
痛みをマヒさせるのが治療ではない
ここで、やっと(?)鎮痛剤の話になりますが、鎮痛剤の作用は、冒頭の「痛み刺激が神経を通って脳に伝わる」メカニズムのうちの神経の部分(痛みの伝達経路)をブロックしているだけであって、痛み そのもの を改善している訳では無いのです。
なので、鎮痛剤の正しい使い方としては、
「急性疼痛が発生してから痛みの原因が治るまでの痛みを緩和するため」に用いるべきです。
つまり、要は、
「身体の緊急事態は、もう十分気づいたんだし、それに対する治療(骨折の手術とか患部の消毒とか抗生剤の投与とか)も しているから、もういいじゃん」というような時に使用すべきなのです。
ということは、
(慢性疼痛は、痛みの原因が「もう治っている」or「自然治癒が望めない」ような時に生じている痛み なのだから)慢性疼痛に対して鎮痛剤を使用する行為は、鎮痛剤が痛みの原因を治している訳では無いから、厳密には治療とは言えないのです。(臭いものにフタをしているだけです。)
ほとんどの皆さんが「つらい」と感じている痛みは、肩こりや腰痛などといった慢性疼痛です。
この時、医者が(痛みが消える可能性が極めて低い状況と知っていながら)具体的な治療をせずに鎮痛剤のみを処方し、挙句の果てに「これが効かなかったら痛みは諦めて」などと発言するのは、漢方医からすれば言語道断です。(※ あくまでも個人的な意見です。)
詳しい東洋学的な治療に関しては次回にしますが、慢性疼痛に関しては、痛みの原因を改善する努力・治療をするべきで、結論から言えば、東洋医学的治療は、それが期待できると思います。
この記事が気に入ったらシェア!
0
0
いいね!0
1
pocket