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皮膚炎

アトピー性皮膚炎を独自の観点で斬る!

この記事の所要時間: 529

『アトピー』って何語?

 

『アトピー』という言葉、普段 日常会話で よく使われていますが、ギリシャ語の『atopia』が語源で「奇妙な」「これといって決められない」という意味があります。

つまり『アトピー性皮膚炎』は「原因をこれといって決められないような奇妙な皮膚炎」ということになります。

 

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『かんぽう×美』的にみる『アトピー性皮膚炎』

 

一般的に、アトピー性皮膚炎の患者さんは、平熱が高く 局所的にも熱を持っている状態なので、いつも身体が熱くて すぐに熱が出やすい人がなり易いと思いませんか?

しかし、意外に思われるかもしれませんが、アトピー性皮膚炎は 慢性的な『冷え』のある人の方がなりやすいです。

これは、一体どういうことでしょう?

 

 

みなさんは、雪山などで冷えすぎて「手が しもやけ になった」という経験はありませんか?

 

当たり前ですが、我々は内臓の動きが止まってしまうと、生きることができません。

だから、人は寒さの厳しい環境に置かれた時、内臓が動きやすい体温・血流を維持させるため手や足の血管を収縮させます。

また、緊張している時も交感神経の働きによって手や足の血管が収縮します。(※ くわしくは、絶対よくわかる自律神経 参照)

 

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しかし、この反応は 体全体にとっては理にかなっていても、手足にしてみれば たまったものではありません。

 

すると、手や足(現場)では 体全体(本部)の意向に背き、体力を振り絞って、手掌や足の裏に わざと熱を出して血管を拡張させる という独自の防御反応を行ないます。

これが『しもやけ』ですが、この反応は『炎症反応』と言って、とても疲れる反応なのです。(※ くわしくは、足を出して寝ている人 必見! あなた、損してますよ!! 参照)

 

 

ここで、アトピー性皮膚炎の話に戻りますが、ということは、

アトピー性皮膚炎の状態は「(手足だけではなく)体じゅうの至る所で『冷え』による『慢性的な しもやけ状態』が起きている」と考えることができます。

また、アトピー性皮膚炎の症状は「わざわざ体力を振り絞って熱を出して 辛い思いをしている」と言えるので、文字通り『奇妙な皮膚炎』を引き起こしているのです。

 

 

 

アトピー性皮膚炎の治療(熱を奪って熱を与える)

 

前述のように、アトピー性皮膚炎の特徴は

「身体のあちこちに熱が出ているが、そのすぐ横は冷たい」
=「全身が冷えていて 、しもやけ状態(炎症)が出現しているところだけ熱い」のです。

 

根本に『冷え』があるのだから、この時、理屈では 身体を温める漢方薬を処方したくなりますが、これは使い方を慎重にしないといけません。

全身の冷えに対し 身体の防御反応が 温めようと躍起になっているときに、急に温める漢方薬を用いると温まり過ぎて身体がショートし、かえって湿疹が多発してしまう恐れがあるからです。

 

たしかに、長期的に見れば、体が温まってくれば防御反応が無理に熱を出さなくて良くなるので、症状の改善が期待できます。

しかし、そのために短期的に生活に支障を来すような痒みに悩まされては、身体のダメージは計り知れません。

 

以上のことから、漢方薬の選択方法としては、まず【黄連】や【黄柏】などの生薬を含んだ方剤を用いて炎症を取り去ってから、その後、体を温める漢方薬を用いる治療法が効果的です。

矛盾した言い回しになりますが、「(悪い)熱を奪って(良い)熱を与える」ということになります。

 

また、十分な休息をとり、リラックスすることも重要です。

統計をとった訳ではありませんが、私の診療所を受診されたアトピー性皮膚炎の患者様のほとんどが、責任感が強く、気配りが行き届き過ぎるくらい真面目な方々です。

自分の体を犠牲にしてまでも、仕事を背負い込んで頑張ってしまうのです。

これには肝臓の働きが大きく関与するので、そういう方には【抑肝散】や【黄連解毒湯】などの肝臓の働きを改善させる漢方薬が効く場合があります。

 

 

 

西洋治療vs漢方治療

 

アトピー性皮膚炎の西洋治療といえば、真っ先に『ステロイド』って思いますよね?

ステロイドには『抗炎症作用』という作用があり、簡単に言うと「炎症させない」ように作用します。

 

炎症が発生しないのだから、湿疹や熱感は出現しなくなり 酷い痒みや皮膚症状から すぐに解放されます。

しかし、これは、症状を抑えているだけであり 病気を治しているとは言えません。

しかも、ステロイドの効果が切れたら、再び すぐに症状が出現するので、ステロイドを長期連用しなければならなくなり、その分、ステロイドの副作用が出現しやすくなります。

 

一方、漢方治療は、前途のように炎症が出現しやすかった状況を変える(体質を改善させる)ことが目的です。

しかし、そういう状態になるまでには時間がかかります。(漢方側から言えば、時間がかかるのではなく時間をかけて ゆっくり変えることが重要だと言いたくなりますが。)

 

つまり、両者ともに長所と短所があります。(どちらが正しくて どちらが間違っているという話ではありません。)

 

私が言いたいのは、ステロイドは「使ってはいけない」のではなく「使い方を間違えないで欲しい」のです。

一番良いのは、「長期的には漢方薬で冷えにくい身体にするように体質改善していく中で、短期的に耐えがたい症状が出現した時にステロイドや痒み止めなどを頓用する」という治療法が良いのではないかと思います。

 

※ 長期連用していたステロイドを急に止めると、激しいリバウンドが起こります。ステロイドの使用を中止する際は、処方された病院の医師の指導のもとで徐々に減らしていって下さい。

 

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