痛みと漢方 ~ 痛みは緊急異常速報だ!
『痛み』は、緊急異常速報?
我々が痛み刺激を受けた時、我々の身体の防御反応は、その痛みを瞬時に脳に伝えることで 一刻も早く 痛みの原因対策をさせようとします。
ここで、狭心症を例にして考えてみましょう。
狭心症は、心臓を動かす筋肉に酸素や栄養を運んでいる血管(冠動脈)が狭窄したり詰まったりすることで、それより先の筋肉が壊死しそうになる病気です。(ちなみに、心臓の筋肉が壊死した状態が心筋梗塞です。)
狭心症の症状(狭心痛)は『運動などにより心臓の動きが活発になる時』や『精神的に緊張したり急に寒い所に行ったりした時など、血管が急に収縮して心臓に負担が掛かった時』などに悪化するケースが大部分です。
ここで、もし、この痛みが無かったら(気づかなかったら)どうなってしまうのかを考えてみましょう。
狭心症が軽症であった場合、「痛みを感じたから激しい運動をしないようにする」「痛みを感じたから精神的に疲れることや、環境が悪いような場所には行かないようにする」というような『対策』をすることで症状の悪化を防ぐことができるかもしれませんが、もし痛みを感じなかったら、心臓の筋肉の酸欠状態が どんどん進行し、ついには心筋梗塞=全身の血流が止まる=死となってしまいます。
つまり、『痛み』は、身体に良くない異常が起こっているのを脳に知らせるための『緊急異常速報』の役割をしているのです。
『痛み』とは『血流障害』だ
『痛み』の種類は、以下の3種類に分類されます。
①物理的な刺激による損傷部位(=現場?)の痛み(侵害受容性疼痛)
(例)
足を踏まれる など・・・急性の圧迫による血流障害
指にトゲが刺さる、やけどをする など・・・細胞や血管の損傷による血流障害
肩こりによる頭痛、腰痛、膝の変形による関節痛 など・・・慢性の圧迫や炎症反応による血流障害
片頭痛・・・周囲の血管の拡張による血流障害
風邪による関節痛、膀胱炎 など・・・感染による血流障害や、その防御反応による炎症反応による血流障害の悪化
②神経系(=伝達経路?)の痛み(神経障害性疼痛)
(例)
坐骨神経痛、肋間神経痛 など・・・筋肉のコリや感染による神経損傷、腫瘍などによる神経の損傷、血流障害
③心理的な影響(=会議室?)により発生している痛み
(例)
帝王切開や盲腸などの下半身麻酔の際のような、本来は痛みを感じていない(それほど痛くない)状況なのにパニック状態によって痛みを感じている
具体例を見ればわかるように、場所や理由の違いこそありますが、結局のところは、血管の収縮、拡大、圧迫、出血などによって血流が障害を受けたことを知らせるために痛みが生じているのです。
ちょっと乱暴に言えば、痛みを感じたということは身体のどこかに『極々軽度の狭心症』のような血流障害が起きていると考えることができます。
※ ③に関しては、かなり特殊なパターンです。痛みの原因が分からないからと、安易に『心因性の疼痛』と診断するのは間違いだと思っています。色々調べても見つけることの出来ない痛みの原因(血流障害)が あるはずです。
漢方薬による鎮痛
前回も触れましたが、痛みの原因そのものに関する治療を行っている最中なら鎮痛剤を投与することは間違いではないですが、何でもかんでも(原因が分からず長期化するような痛みに対しても)鎮痛剤だけを処方して「これが効かなかったら諦めて」などと言うような治療は間違っていると思います。
『かんぽう×美』的には、痛みの治療には血行を改善させる作用が期待できる漢方薬を おすすめします。
入浴によって軽減できる痛みや、疲れている時は出現するけど良く寝たら改善する痛みなどには、漢方薬が効果的です。
具体的には、
①虚弱によって生じている血流障害には駆瘀血剤(くおけつざい)と呼ばれる漢方薬
②睡眠障害などによって生じている血流障害には気剤(きざい)と呼ばれる漢方薬
③胃腸障害などによって生じている血流障害には柴胡剤(さいこざい)と呼ばれる漢方薬
・・・などといった具合に実際に診察してから処方されます。
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