寝る前の「コップ一杯の水」は本当に必要なのか?
『寝る前のコップ1杯の水』議論
健康情報番組などで「健康のため、寝る前にコップ1杯の水を飲みましょう。」という話を聞いたことがあると思いますが、これって、本当に正しいのでしょうか?
人は、毎日必ず水分を摂らなければなりません。
我々は日頃から(万が一の為に)エネルギーを脂肪として蓄えているので、例えば、風邪をひいた場合、2~3日食事を摂らなくても死ぬことはありませんが、水分を摂らないと すぐに脱水状態になり命の危険が生じます。
私は研修医時代、小児科を専攻していましたが、風邪をひいて ぐったりしている お子さんの ご家族に、
「人間は、一般的な風邪の発熱くらいでは死ぬことはありません。2~3日食事を摂らなくても死にません。でも、ちょっと水分を摂らなかっただけで簡単に脱水になって命を落とすことがあります。だから、たとえ お子さんが嫌がっても、水分だけは無理やりにでも飲ませてください。吐いたり、下痢をしたら、その分、必ず水分を与えてください。」
と話していました。
また、夏場などに暑い室内や炎天下で熱中症になって亡くなられる事故が後を絶ちませんが、我々は、体温が急激に上昇した時には、その対応策として汗をかいて、気化熱という原理で身体の表面の温度を下げようとします。
すると、短時間に大量の水分が喪失していくので、脱水が進行し、体内の電解質のバランスが崩れ、死に至ってしまうのです。
急激な水分喪失のケース以外にも、慢性的な水分の摂取不足などで血液がドロドロになり、血管が詰まることで心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な病気になってしまう事もあります。
なので、こういったケースの予防のためには、確かに『寝る前のコップ1杯の水』は有効かもしれません。
水毒の話
当サイトの投稿を何回か読んでいただいている方々には、もう『水毒』という単語は聞きなれた言葉になっているかもしれません。
『水毒』とは、「水分は摂らなければ死んでしまうくらい必要なものですが、摂り過ぎたら摂り過ぎたで、身体に毒になってしまいますよ」という意味と思ってください。
以下は、それを踏まえた体内水分量に関する図です。
図の通り、矢印が左に傾き体内水分量が不足すれば『脱水=生命の危機』、一方、矢印が右に傾き体内水分量が過剰になると『水毒』の状態となります。
水毒の具体的な症状としては、
むくみ・めまい(乗り物酔い etc.)・耳鳴り・頻尿・夜間尿・花粉症や喘息などの症状の悪化(鼻水や痰といった分泌物の過剰による)・冷え症(生理不順、のぼせ etc.)・多汗症
などです。
でも、ここでよく見てください。
水毒の症状は、確かに出現すると厄介ですが、その多くは、死に至るようなものではありません。
つまり、情報番組などで、
「寝る前にコップ1杯の水を飲みましょう。」
(でも、飲み過ぎも死ぬほどじゃないけど良くないですよ。)
と、
「水を飲み過ぎないようにしましょう。」
(でも、飲まなさ過ぎると死んじゃいますよ。)
では、どちらの方が短時間の間に より多くの視聴者の身の危険を守ることが出来るか?と言えば、一目瞭然です。
しかし、何事にも程度が肝腎です。
「(脱水予防や腎結石にならないために)日頃から水を たくさん飲みましょう」と言われたから、言われた通りに水を飲み続けた ご高齢の方が、血管内に薄い血液が増え過ぎた結果、心不全になって病院に運ばれるといったケースも実際には多く見られます。
一般的に、水分を摂取するときに「ガブガブ飲む」といった表現で表されるような飲み方をし続けるのは、身体には良くないことが多いです。しかし、そこを自己評価するのは難しいかもしれませんね。
もし悩むくらいなら、やや水毒気味にしておいた方が命に関わる危険性からは回避できますが、例えば、「寝る前に水を飲むと、夜中にトイレに行きたくて目が醒めてしまう。」といったような症状のある方は、もしかしたら「日頃から十分な水分摂取をされている方」や「水毒気味の方」なのかもしれませんので、気になる方は東洋医学的な診察を受診された方が良いでしょう。
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