食前酒って何のためにあるの? ~ 漢方と食前酒の共通性とは?
食前酒の役割
ちょっと奮発して料亭や温泉宿などで会席料理を注文した時に『食前酒』として少量の梅酒や杏酒が出された・・・という経験はありませんか?
『食前酒』の起源は18~19世紀のイタリアともフランスとも言われていますが、その役割は食前に お酒を飲むことで胃を直接刺激したり胃の血流量を増加させたりすることによる食欲増強効果や、食事をする仲間との会話を弾ませる効果が挙げられます。
欧米ではカクテルやシェリー酒といったアルコール度数の強い酒による刺激が好まれる一方、ヨーロッパではスパークリングワインのようなアルコール度数は弱いが炭酸系による刺激を好む傾向があるようです。
日本の「とりあえずビール」も、考えようによっては『食前酒』なのかもしれません。(食前酒が そのまま食中酒~食後酒になっているようですが・・・笑)
アルコールと胃腸系との関係
アルコールは約20%が【胃】、残りの約80%が【腸】で吸収されています。
ということは、食前(=空腹時)の飲酒は、あっという間に腸に流れて行き、満腹時よりもアルコールが早く吸収されてしまいます。(満腹時は、胃の出口である「幽門部」が閉じられているため腸への流れ込みが緩やかになり吸収が遅くなります。)
そして、アルコールを分解する際に生じる「アセトアルデヒド」という中間成分により血管が拡張するので、少量の飲酒により胃腸の血流が増加して動きやすくなって食欲が増加します。
胃腸系の動きを活発にする方法
冒頭で述べた『食前酒』に選ばれる お酒の種類に地域差があるのは、気候や体格、肝機能、胃腸機能の差などが考えられ、どれが正解というものは ありません。それに、お酒が飲めない人も居られるので食前酒を絶対に飲まなければならないということもありません。
胃腸系を活発にする方法は、食前酒以外にも あります。
例えば、食前に 温かい飲み物や お椀もの を食べると胃が温まり動きやすくなります。
会席料理では前菜の直後に「椀物(わんもの)」として お吸い物などの汁物が出されますが、これは、その後の刺身や焼魚などのメインディッシュを美味しく食べてもらうための料理人の知恵とも言えるでしょう。
漢方薬にも「胃の血流を増加させる作用」がある薬が たくさんあります。
具体的には『柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)』『六君子湯(りっくんしとう)』『半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)』など、挙げるとキリがないくらいあります。
どの漢方薬が合っているかは専門機関での診察が必要ですが、どの漢方薬にしても 某CMではありませんが、「食べる前に飲む」ことが重要です。
実際、胃腸虚弱の患者さんに食前に上記のような漢方薬を服用してもらうと、「食欲が湧いて食事が食べられるようになった!」といった声を多く いただきます。
食前酒ならぬ『食前漢方』、おススメです。
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