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ステロイドをチョットだけ知ってみよう! (はなしはそれからだ)

この記事の所要時間: 458

「ステロイド」って・・・

 

『ステロイド剤』と聞くと、『アトピー や 喘息 の治療薬』というイメージの他に『筋肉増強剤』というイメージを持たれる人も多いのではないかと思いますが、実は、両者は全く異なります。

『筋肉増強剤』という意味で使われるステロイド剤は別名『アナボリックステロイド』といい『男性ホルモン(性腺ホルモンの1つ)』を化学的に合成したものです。一方、いわゆる『西洋治療薬』として使われているステロイド剤は別名『抗炎症性ステロイド』といい『副腎皮質ホルモン』を化学的に合成したものです。

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ステロイドの副作用(※ここは読み飛ばしても可)

 

ステロイド剤が嫌われる理由は「副作用の多さ」だと思います。以下に副作用を列記してみます。

1. 易感染性

2. 骨粗しょう症・無菌性大腿骨頭壊死・成長障害

3. 糖尿病

4. ステロイド性潰瘍

5. 満月様顔貌・中心性肥満

6. 精神症状(不眠症・うつ状態など)

7. 血栓症・動脈硬化・高脂血症

8. 高血圧・不整脈・むくみ

9. 眼症状(白内障・緑内障)

10. 皮膚症状(ニキビ・毛深くなるなど)

11. その他(増毛・脱毛・生理不順など)

・・・と、まあ、列記するだけでも嫌な気分になりますが、これらの副作用は、みな、ステロイド剤の投与量を減らせば改善するものが多いです。(しかし、病気によっては減量すると病気自体の症状が悪化してしまうのが悩みの種です。)

 

そして、最も注意しなければならないのは、急に服用を中止することによる『副腎クリーゼ(急性副腎不全)』です。

ステロイド剤は『副腎皮質ホルモン』を化学的に合成したものなので、ステロイド剤が過剰に摂取された時、本来、副腎から分泌されるべきだった副腎皮質ホルモンの分泌は抑制されてしまっています。(脳が「ちょっと量が多過ぎるから製造しないで!」と命令しているのです。)ここで、急に服用を中止してしまったら、その瞬間、体内の副腎皮質ホルモンの量が0になっていまい、急速な脱水症状、血圧低下、意識障害、呼吸困難などが生じ、命に係わる事態になってしまうのです。

 

 

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ステロイドの効果と漢方薬の効果

 

これだけ副作用の多いステロイド剤が多くの疾患で使われているのは、もちろん、副作用以上の効果が期待できるからですが、その効果とは何だと思いますか?

それは、ステロイド剤の別名にもなっている、強い『抗炎症作用』と『免疫抑制作用』『抗アレルギー作用』です。

 

例えば、以前、「アトピー性皮膚炎は、寒い時、手が冷えすぎて『しもやけ』になるように、身体が冷えて『全身しもやけ状態』になっているようなものです」と説明をしました。(詳しくは、こちら) これは、医学的に言うと『全身の皮膚の炎症状態(皮膚炎)』です。だから、ステロイド剤を服用すると『抗炎症作用』によって、皮膚「炎」が抑えられるのです。

 

同じように、喘息は気管や気管支の炎症により空気が通りにくくなる病気だし、膠原病や肝炎などの自己免疫疾患は自分の抗体が自分の細胞を傷付けてしまうことによる炎症症状が原因です。

 

つまり、この世に存在する、ありとあらゆる炎症性疾患にステロイドは効果がありますが、これは、「炎症を根本的に治す」のではなく「(薬が効いている間だけ)炎症を起こさないようにする」という効果です。

この効果は即効性であることが魅力的ですが、上記のように副作用問題が必ず付きまといます。

アトピー性皮膚炎が『痒み止め』や『保湿剤』で落ち着かせることができるなら、喘息も『気管支拡張剤』で改善するなら、ステロイド剤を使わない方が良いです。

しかし、いわゆる『難病』と指定されているような原因不明の炎症性疾患は、ステロイド剤以外の治療法が(現時点では)発見されていないために、(仕方なく)ステロイド剤を使用しているというのが現状です。

 

 

一方、これに対し、漢方薬は どのように働くのかというと、一言で言えば「炎症が出現しやすかった状況を変える(体質を改善させる)」ことを目的としています。

アトピー性皮膚炎は全身の血流を ゆっくりと改善させることで『しもやけ』しにくい身体にし、また、喘息も口~気管支の周りの血流を改善させることで『むくみ』を解消させて症状を抑えるということを目指しています。

自己免疫疾患は自分の抗体が自分の細胞を傷付けてしまうのだから、体力を上げておけば、そのダメージを最小限度に抑えることができ、そうすれば、症状が出にくい身体に体質改善できるという考え方です。

しかし、体質改善完了までには時間がかかります。(漢方側から言えば、時間がかかるのではなく時間をかけて ゆっくり変えることが重要だと言いたくなりますが。)

 

つまり、両者ともに長所と短所があります。(どちらが正しくて どちらが間違っているという話ではありません。)

 

私が言いたいのは、ステロイドは「使ってはいけない」のではなく「使い方を間違えないで欲しい」のです。

一番良いのは、「長期的には漢方薬で体質改善していく中で、短期的には耐えがたい症状に対しステロイド剤を使用する」という治療法が良いと思います。(実際、ネフローゼ症候群の患者さんに対して『柴苓湯(さいれいとう)』という漢方薬を併用することでステロイド剤の投与量を減少することができたという研究報告が西洋医学会から報告されています。)

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