漢方治療中はサプリを飲んでてもいいの?
漢方薬とサプリメントの関係
日頃、私の診療所で初診の患者さんを診察した際に、「今までサプリを飲んでいたのですが、どうすればいいでしょうか?」という質問を受けることがあります。
漢方薬を扱っているメーカーで健康食品を販売している所もありますし、そもそも、漢方薬とサプリメントの違いが分かりにくい商品もあるので、みなさんが混乱してしまうのも よくわかります。
今回は、両者の関係性について話を進めていきます。
サプリメントの目的
サプリメントの正式名称は、ダイエタリー・サプリメント(dietary supplement)といいます。直訳すると「飲食物的に補うもの、追加分」といったところでしょうか?
みなさんご承知の通り、サプリメントは基本的には食品(食べ物からの抽出物)です。
しかし、例えばビタミン剤などのように、一部のサプリを日本では『薬』と分類することがあります。(※もっと詳しく言うと、日本の『薬事法』という法律が現代医療に追い付かず、現在、規制緩和によって少しずつ改正され、今ではビタミン剤は食品での取り扱いができるようになりましたが、まだ ややこしい部分があります。つまり、この混乱は、医学の問題ではなく法律の問題です。)
アメリカにおけるサプリの役割に関しては、とても西洋的な発想だと思います。
少々乱暴な言い方ですが、「健康に良いと言われる食品のうち、(今 分かっている)素晴らしい作用がある成分だけを抽出・濃縮したものを食べた方が手っ取り早くていい」といったような発想です。
具体的には、「大豆だけをいっぱい食べるのは辛いから『イソフラボン』を濃縮したカプセルを摂る。」とか「果物を食べ過ぎたら太るのでビタミン剤だけ摂る」といった具合です。
短時間に多くの成分を有効的に摂取するという合理性を考えると、サプリにかなうものは無いかもしれません。
しかし、これでは、今 分かっている成分しか身体に入りません。
納豆から『ナットウキナーゼ』という酵素が発見されたのは1980年代です。(今から せいぜい30~40年くらい前の話です。)
でも、納豆が身体に良いと言われているのは、それよりも何百年も前からです。もしかしたら、納豆には『ナットウキナーゼ』だけじゃなく、まだ見つかっていない健康になる物質があるかもしれません。(むしろ、無いとは言い切れないでしょう。)
つまり、納豆を食べずに『ナットウキナーゼ』だけを摂り続けるという行為が本当に正しいかどうかは、これから、また数十年~数百年かけて立証されるのかもしれず、つまり、それまで、誰も分からないのです。
漢方薬の役割
サプリと比べ、東洋医学には2000年以上の歴史があり、その中で健康に良いとして「残った」もの、つまり、2000年以上の実績により立証されたものが漢方薬です。
そして、サプリと根本的に違うのは、「特定の栄養源を濃縮させて体内に取り込みましょう」ではなく「胃腸系の動きを助けることで、自然界に存在する ありとあらゆる栄養源を取り込みましょう」ということです。
「結果ありき(結果がすべて)の西洋医学」vs「疲労などの血流低下によって正常じゃない部分が生まれたら、それを補うようにする東洋医学」
そもそもの考え方が異なるので、お互いの治療が喧嘩する(けん制し合う)ことは無く、漢方治療中のサプリ服用の是非については、東洋医学的には「良くも悪くもない」というのが正直なところです。
ただし、サプリは、あくまでも『栄養補助食品』として服用し、決して、それだけで食事を済ませるような事はしないでください。(自然界の恵みを必ず食べてください。)
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